プリント基板パターンエディタPCBE


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私が愛用するPWBエディタがPCBEです。必要にしてかつ十分な機能が網羅されており非常に使いやすいです。いささかくせがあるようで見ただけでは使い方がよくわからなかったのですが、わかってみるとなかなかにうまくできています。

注:PWB=Printed Wiring Board, PCB=Printed Circuit Board であり、ほぼ同じ意味として一般に使用されています。が、PWBは印刷配線板であり、PCBは印刷回路板のことですから、厳密にはPWBの方がプリント板を表現するには正しいといえると思います。プリント板にある銅箔などはあくまでも配線だけで、回路ではありませんから。

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PCBEでパターンを描画するには次のような手順を踏むのがよさそうです。

  1. 必要な設定を行う
  2. 基板の外形を描画する
  3. 基板の穴(取り付け穴)を描画する
  4. 部品をおおざっぱにレイアウトする(配線のやりやすさなどイメージしつつ・・・)
  5. 入出力の端子などもレイアウトする
  6. 配線を行う(ピン間1本がいいところかな?)
  7. 必要な銅箔文字入れなどを行う
  8. 空いているところはベタグランドなどにしてみる
  9. 完成
  10. 新しい部品の登録

現実には4〜5はかなり試行錯誤しながらレイアウトを変更しつつ配線していくことになるのではないかとは思います。慣れてくれば最初の段階で結構うまい具合に部品のレイアウトができたりしますので何事も修行が必要ということのようです。

まず一目みただけでは何の機能を有するのか実にわかりにくいのがボタンです。以下にボタンの機能を一覧にしてみました。マウスカーソルをボタンのところに移動すればボタン名称がポップアップするとはいえ、ちょっとボタンのアイコンが直感性に書けている点は否めません。

  ボタン メニュー 機能 注記
image レイヤ選択 作画→レイヤ選択 丸ランド・角ランド・ラインなどの描画対象とするレイヤを選択したり、各レイヤの表示・非表示などを設定する
image 要素選択 作画→要素選択 丸ランド・角ランド・ライン・パットなどの大きさや太さを選択する
image 丸ランド 作画→丸ランド 丸ランドを描画する 現在対象としているレイヤに描画される
image 角ランド 作画→角ランド 角ランドを描画する
image ライン・多角形 作画→ライン・多角形 直線を描画する
image パット 作画→パット パットを描画する
image 文字 作画→文字 文字列を描画する 現在対象としているレイヤに描画される
image 変形 編集→変形
image 削除 編集→削除
image 平行線/中間線 編集→平行線/中間線
image 接続/伸縮/分割 編集→接続/伸縮/分割
image 変更 編集→変更
image 塗潰し/塗潰し解除/窓抜き 編集→塗潰し/塗潰し解除/窓抜き ラインで囲まれた領域を塗りつぶす ラインで囲まれた領域を指定すると塗り潰しなどが可能
image 複数 編集→複数 編集対象とするオブジェクトを選択する
image 移動 編集→移動 編集対象を移動する ‘複数’で対象を指定後‘移動’を選択し、さらに画面をクリックすると移動モードになる
image 結合/分解/部品 編集→結合/分解/部品
image 切取り 編集→切取り 編集対象を切り取る ‘複数’で対象を指定後これらのボタンが有効になる
image コピー 編集→コピー 編集対象をクリップボードにコピーする
image 貼付け 編集→貼付け クリップボードからペーストする
image 反転 編集→反転 編集対象を左右ミラー反転させる ‘複数’で対象を指定後‘移動’で移動モードとするとこれらのボタンが有効になる
image 回転 編集→回転 回転する
image 数値入力 作画→数値入力
image (交点/端点)入力 作画→交点選択
作画→端点選択
image 拡大 表示→拡大 画面表示を拡大する 選択後に拡大したい領域を指定する
image 縮小 表示→縮小 画面表示を縮小する
image グリッド設定 設定→グリッド グリッドの間隔を設定する

必要な設定を行う

グリッドを1.27mmに設定します。これはICなどの足のピッチがインチ系列になっていることからグリッドがインチ系列で並ぶようにすると使いやすいからです。PCBEは起動時には通常グリッド整列機能がオンになっていますから、グリッド間隔の設定は重要です。そのためにはメニューの“設定→グリッド”を選択するかツールバーの“image”をクリックすることで開くダイアログに1.27と入力します。なお、2.54にしないのはピン間を通したいときに困るからで、もっと細かくレイアウトしたければ0.635などに設定してもよいでしょう。


基板の外形を描画する

すでに使用する基板は決まっているでしょうか。アマチュアの場合、自由な基板サイズというのは選べませんから、通常はサンハヤトあたりの既製品から選択することになると思います。使用する基板の大きさを決めたら、まずその大きさを画面上に描画してしまいましょう。部品レイアウトなどの際の目安になります。ここではとりあえず、70mm×50mmの基板(そんな大きさがあるかどうかは別として)を想定することにします。

レイヤを外形に切り替える

imageボタンをクリックするとレイヤ選択ダイアログが表示されます。

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ここでレイヤ7のラジオボタンをクリックして“決定”します。するとレイヤが7の外形に切り替わります。

ここに外形の線を引くのでimageボタンをクリックしライン描画ツールを選択します。

次にimageボタンをクリックして線の太さを選択します。ここでは外形だけなので特に太さは意味ありませんが、ここでは0.1mmを選択することにします。下図のようなダイアログがでますので、0.1mmのラジオボタンをクリックして“選択”します。

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次に画面上で適当な位置でクリックします。ここが基板の角の1つになります。ここを始点として希望する大きさの四角形を順に各角でクリックしていけばよいのです。ラインは左クリックすれば次々と連続する線が描画されますから、描画が完了したら右ボタンをクリックしてください。その時点で描画が中断されます。

また、基板の大きさはわかっているのでimageボタンを利用すれば数値で希望の長さに線が引けます。

以上で外形の描画ができました。この時点で画面は次のようになっていると思います(グリッドの点々は縮小したため消えてしまっています)

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基板の穴(取り付け穴)を描画する

次に基板の取り付け穴を描画します。ここでは孔レイヤに描画することにしますので、imageボタンをクリックしてレイヤ選択ダイアログを表示させます。そこで“>>”ボタンをクリックし、レイヤ選択ダイアログの次のページを表示させます(下図)。

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レイヤ8の孔レイヤのラジオボタンをクリックして“決定”します。

四隅に穴を描画するためimageボタンをクリックし、丸ランド描画ツールを選択します。このツールは単に現在選択されているレイヤに丸を描画するツールです。

次にimageボタンをクリックして丸の大きさを指定します。ここでは3.0mm(普通のねじ止め用の穴はこのくらいの大きさです)に設定するため、“>>”をクリックしてダイアログの次のページを表示させ、3.0mmのラジオボタンを選択して、決定します。

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するとマウスカーソルが丸印に変わりますから、適当な位置でクリックすれば大きさ3.0mmの穴が描画されます。

以上で外形および取り付け穴の描画が完成です。

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部品をおおざっぱにレイアウトする(配線のやりやすさなどイメージしつつ・・・)

imageボタンをクリックすると配置する部品を選択するダイアログ(下図)が表示されます。

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ここで“一覧”ボタンをクリックすると、ライブラリに登録されている部品から選択するダイアログ(下図)が表示されますから

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配置したい部品を選択して、“決定”します。すると白(灰色?)の部品がマウスカーソルとともに画面上を動きますので、適当なところに”えいやっ”と配置します(下図左側がレイアウト中の部品で、右側がレイアウト済みの部品)。

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おもな部品をレイアウトしました。

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入出力の端子などもレイアウトする

入出力の端子やチェック端子(試作後に評価を行う場合にプローブなどをくわえさせる端子)なども必要です。空いている場所にレイアウトしましょう。入出力端子は普通基板の縁に近いところにします。また、チェック端子は部品が立て込んでいるところはなるべく避けます。あとで使いにくくなってしまいます。特にグランド端子を複数用意しておくことは評価を行う上でこの上なく便利です。サンプル基板は小さいので関係ないのですが、大きな基板だと、何カ所かのグランド端子(プローブのグランドをくわえさせる端子)は必須となります。

まず、imageボタンをクリックしてパッドツールを選択します。次にimageボタンをクリックしてパッドの大きさを選択します。

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上のようなダイアログが表示されますから“<<”ボタンか“>>”ボタンで適当なパッドを選択します。たとえば上のNo.7のパッドはレイヤ1に直径1.6mmの円を描き、レイヤ5に直径1.8mmの円を描き、レイヤ8に直径0.8mmの円を描くパッドです。レイヤ1はパターンのレイヤで、レイヤ5はレジストのレイヤ、レイヤ8は穴のレイヤですから、結局1.6mmの銅箔のパッドで、孔径は0.8mm、レジストを0.1mm逃げてかけることになります(現実には個人の場合レジストは手作業なので関係ないとは思いますが・・・)。

ここで、希望するパッドがない場合の登録方法を説明します。

ここでは1.6mmの銅箔パターン、1.8mmのレジストパターン、0.8mmの部品挿入孔の3つの要素からなるパッドを作成します。

メニューから“設定→パッド設定”を選択すると次のようなダイアログが表示されますので、“>>”ボタンで空いているパッドNo.を探します。

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そこで、“選択”ボタンをクリックすると、レイヤ選択ダイアログが表示されますから、パッドの構成要素3つのうちの1つである銅箔パターンを作成するため、パターン1のレイヤを選択します。

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次に“選択”ボタンをクリックして、銅箔パターンの大きさを指定します。ここでは1.6にします。

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そして、レイヤが“1:パターン1”、アパーチャが“24:1.600”になっているのを確認して、“追加”ボタンをクリックすると、左側の窓に“レイヤー No 1: 1.600(No 24)”と追加されます。

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ここで再度“選択”をクリックして、レジスト1レイヤを選択し、“選択”をクリックしてアパーチャ径1.8mmを選択して“追加”、

さらに孔レイヤを選択、アパーチャ径0.8mmを選択して、“追加”します。これで必要なパッド構成要素はすべて登録できましたので、“終了”をクリックすれば、次のパッド選択から今作ったパッドが選べるようになります。ただしこのままだとPCBEを終了したら登録は消えてしまいますので、次回以降も使用したければ、メニューの“設定→標準に設定”を選択してください。

パッドを決定したら適当にレイアウトしてください。

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配線を行う(ピン間1本がいいところかな?)

主なパッドや部品(のパッド)が配置できたところで配線作業に入ります。普通アマチュアは片面基板しか作らないと思いますので配線するのはパターン1のレイヤ(色は赤)に描画することになります。

imageボタンをクリックして、パターン1のレイヤを選択します。imageボタンをクリックしてライン描画ツールを選択します。まずは電源グラウンドの配線を行ってしまいましょう。電源やグラウンドはなるべく太い線で引きたいところです(電源インピーダンスを下げたい)。最低でも0.5mmの幅は確保したいところです。そこで、imageボタンをクリックしてひとまず0.5mmを選択します。そして電源グラウンドの配線をおこないます。

次に各信号線の配線を行います。やはりimageボタンをクリックして信号線に用いる太さを選択します。0.25mmや0.2mm程度を選択すればよいとは思いますが、各自のプリント板作成技術に応じてということになります。最初のうちは太めが無難です。太さを選択したあとは配線するのみです。


必要な銅箔文字入れなどを行う

せっかくなのでプリント板には名前など入れたりしたいものです。メーカならシルク印刷するんですが、アマチュアには無理な相談ですから、銅箔で文字入れということになります。imageボタンをクリックし、文字列を入力すればOK。文字の大きさ、線の太さなども自由に選んでください。なお、片面基板に文字入れする場合は普通左右反転した方がいいと思います。ただこれは各自の基板の作り方にもよって変わってきますので、よく考えてください。


空いているところはベタグランドなどにしてみる

簡単なパターンだったら配線もすぐ終わることでしょう。ところが画面上でもわかるように隙間がいっぱいあると思います。このままでもかまわないのですが、次のようなことをするとベターです。

  1. 空いている部分はすべてベタグラウンドにする
    • 溶かし出す銅箔が減るためエッチング液の疲労が少なくて済む(長持ちする)
  1. 空いている部分に予備座(あとで設計変更した場合に部品を搭載するための余分なパッドのこと。ディジタル回路なら16ピンや20ピン程度のDIP−ICのパッドを用意しておくとよい。アナログの場合はある程度の数のパッドを適当にあけておくのがよい。)をもうける。
    • 設計変更したときにも簡単に部品を搭載できる。
    • DIP-ICなどのパッドにはあらかじめ電源グラウンドの配線をしておけばさらに楽。

個々のメリットなどを考慮して適宜行います。


完成


新しい部品の登録

登録したい通りにパッドやシルク印刷などを描画します。試しにこんな部品にしてみました。

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そこで登録したい部分をimageツールを選択してすべて選択します。そしてimageボタンをクリックすると・・・

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というダイアログが表示されますから、“部品登録”をクリックします。

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と、上のようなダイアログが表示されます。部品名を入力して“決定”をクリックすれば、完了。簡単でしょ。